解説:“森林の減少” “生物多様性の減少” 〜 地球から 森や動物が消える!? 〜 |
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45億年にわたる地球の歴史を、24時間の時計に当てはめてみると、人類は最後の1分を切ってから出現した、「新参者」。その人類が原因をつくって、最後の一瞬の間に大量絶滅を招いているわけです。多くの種の、急激な減少そして絶滅……その影響が地球の自然に、そして私たちの暮らしにどのようなかたちで現れるかは、想像もつきません。 |
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↓ |
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FAO(国連食糧農業機関)が1999年3月に公表した「世界森林白書1999
(State of the World's Forests
1999)」によると1995年現在の世界の森林面積は約34億5,000万haであり、全陸地面積の約27%を占めている。
森林は特に熱帯地域の開発途上国の森林を中心に減少・劣化を続けている。
熱帯林は1980年から90年の間に1億5,400万haも減少した。(日本の面積の4倍)
1980年から95年の全森林面積は約1億8,000万ha減少している。さらに、1990年から1995年にかけて世界の森林面積は35億1,000万haから34億5,000万haになり、総計5,635万ha減少した。年間平均の減少面積は約1,130万ha、年間の平均減少率は0.3%
途上国では1990年から95年にかけて6,500万ha以上の森林が消失している。東南アジアの大陸部で年間減少率が1.6%、島嶼部で1.3%と減少率が著しい。この期間、最も森林の減少面積が大きかったのはブラジルで、1,277万ha、ついでインドネシア542万ha、次いで旧ザイール、ボリビア、メキシコとなっている(以上の数値はすべてFAO,
1999 State of World's Forests) |
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1995年 |
1990年(e) |
1990〜95年 |
1990〜95年
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森林面積 |
国土
面積に
占める
割合 |
天然林 |
森林面積 |
森林面積変化 |
森林面積
年平均変化率 |
(千ha) |
(%) |
(千ha) |
(千ha) |
(千ha) |
(%) |
アジア |
503,001 |
16.4 |
- |
517,505 |
-14,504 |
-0.6 |
南アジア |
77,137 |
18.7
|
61,836 |
77,842 |
-705 |
-0.2 |
大陸部東南アジア |
70,163 |
36.9 |
67,877 |
75,984 |
-5,821 |
-1.6 |
島嶼部東南アジア(a)
|
132,466 |
54.2 |
126,038 |
141,215 |
-8,749
|
-1.3 |
熱帯アジア計 |
279,766 |
33.0 |
255,751 |
295,041 |
-15,275 |
-1.1 |
中東 |
41,564 |
3.8 |
- |
40,229 |
1,335 |
0.7 |
東アジア |
181,671 |
15.9 |
- |
182,235
|
-564
|
-0.1
|
温帯アジア計 |
223,235
|
10.0
|
- |
222,464
|
771
|
0
|
|
オセアニア |
90,695
|
10.7 |
- |
91,149
|
-454
|
-0.1
|
熱帯オセアニア計 |
41,903
|
77.5
|
41,752
|
42,659
|
-756
|
-0.4
|
温帯オセアニア計(b) |
48,792
|
6.1
|
- |
48,490
|
302
|
0.1
|
|
北中米 |
536,529
|
25.5 |
- |
537,898
|
-1,369
|
-0.1
|
温帯北中米計 |
457,086
|
24.9
|
- |
453,270
|
3,816
|
0.2
|
中米・メキシコ |
75,018
|
31.0
|
74,824
|
79,812
|
-4,794
|
-1.2
|
カリブ海諸国 |
4,425
|
19.4
|
4,134
|
4,816
|
-391
|
-1.7
|
熱帯北中米計 |
79,443
|
30.0
|
78,958
|
84,628
|
-5,185
|
-1.3
|
|
南米 |
870,594
|
49.7 |
863,315
|
894,466
|
-23,872
|
-0.5
|
熱帯南米計 |
827,946
|
59.8
|
822,385
|
851,223
|
-23,277
|
-0.6
|
温帯南米計(c) |
42,648
|
11.7
|
40,930
|
43,243
|
-595
|
-0.3
|
|
ヨーロッパ |
933,326
|
41.3
|
- |
930,732
|
2,594
|
0
|
北ヨーロッパ |
52,538
|
46.8
|
- |
52,498
|
40
|
- |
西ヨーロッパ |
59,479
|
24.2
|
- |
57,688
|
1,791
|
0.6
|
東ヨーロッパ |
821,309
|
43.2
|
- |
820,546
|
763
|
0
|
|
アフリカ |
520,237
|
17.7 |
515,455
|
538,978
|
-18,741
|
-0.7
|
西サヘル |
39,827
|
7.5
|
39,620
|
41,300
|
-1,473
|
-0.7
|
東サヘル |
57,542
|
12.3
|
57,028
|
59,640
|
-2,098
|
-0.7
|
西アフリカ |
46,324
|
22.8
|
46,003
|
48,783
|
-2,459
|
-1.0
|
中央アフリカ |
204,677
|
48.3
|
204,352
|
210,681
|
-6,004
|
-0.6
|
熱帯南アフリカ |
141,311
|
25.6
|
140,754
|
147,099
|
-5,788
|
-0.8
|
島嶼部東アフリカ(d) |
15,220
|
25.9
|
14,986
|
15,873
|
-653
|
-0.8
|
熱帯アフリカ計 |
504,901
|
22.6
|
502,743
|
523,376
|
-18,475
|
-0.7
|
熱帯以外アフリカ計 |
15,336
|
2.2
|
12,712
|
15,602
|
-266
|
-0.3
|
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旧ソ連諸国 |
816,167
|
37.2 |
- |
813,381
|
2,786
|
0.1
|
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合計 |
3,454,382
|
26.6 |
- |
3,510,728
|
-56,346
|
-0.3
|
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↓ |
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森林減少の原因として、過度の焼畑耕作、農地への転用、過放牧、薪炭材の過剰採取商業材の不適合な伐採、森林火災などが直接の原因として指摘されている。こうした直接の原因の背景として、開発途上国における急速的な人口増加、貧困などが間接の原因として重視されている。
熱帯林の減少による影響は、多くの野生生物種が絶滅、または絶滅の危機に瀕するおそれがあることに加え、森林減少による大量の二酸化炭素の放出が地球温暖化を加速させることが懸念されている。
森林減少、特に熱帯林の減少を防ぐため、国際熱帯木材機関(ITTO)や国連食糧農業機関(FAO)といった国際機関による協力や二国間の協力などが進められている。
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↓
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生物多様性の減少 |
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野生動物の絶滅の原因は複雑であり、単一の原因による絶滅はあり得ないといっても過言ではないでしょう。絶滅は、さまざまな要因の複雑的な影響、相乗効果によって起きます。野生動物を絶滅のおそれがあるほど減少させる原因も、また複雑です。
敢えて絶滅した種ごとに影響を最も強く与えた原因を推定してまとめたのが右の図です。これはIUCNとWRI(世界資源研究所)が協力し、1600年以降の絶滅種について分析したものです。
移入動物(イヌ、ネコ、ヤギなどを含む)が原因で絶滅が起きたとされるケースが、全体の39%を占めています。これは、この約400年のうちの早い時代の絶滅には、移入された動物、主にイヌ、ネコなどによって絶滅したものが多いからでしょう。ただし、絶滅や極度の減少の原因を分析するには、時代的な変化を考慮するべきなので、最近絶滅したものや、いま滅びつつあるものに移入動物がすこぶる大きなインパクトを与えているであるとしても、それがトップを占めているとは即断できません。
近・現代の生物の減少及び絶滅の原因が、ほとんど全て(約98%)人間の行為であることを念頭に |
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↓ |
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生物の絶滅 |
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1,600年から現在までの絶滅種のリスト(表2)を見ると600種以上が絶滅し、飼育下でのみ生き残っている種が30種いることがわかります。前述のとおり、5回に及ぶ大量絶滅を経て、地球上に発生した生物の90%〜99%が絶滅しているわけですが、それでも地質時代の絶滅は平均すると1年あたり400万種につき1種といわれています。1,600年からの400年間に絶滅した611種と比較してみると、一見さほどの違いはないように思われますが、多くの研究者は「現在の絶滅のスピードは地質時代のスピードの100〜1,000倍である」と言っています。その理由は、地球上で最も生物の多様性が高く、陸上に生息する全生物種数の少なくとも50%〜90%が生存するとされる熱帯雨林(地球上の表面積の7%弱)が、大規模かつ急激に失われているため、未知の種の「大量絶滅」が進行していると考えられているからです。 |
分類群別の絶滅種数(1600〜) |
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絶滅 |
野生
絶滅 |
合計 |
脊椎動物 |
哺乳類 |
86 |
3 |
89 |
鳥類 |
104 |
4 |
108 |
爬虫類 |
20 |
1 |
21 |
両生類 |
5 |
0 |
5 |
魚類 |
81 |
11 |
92 |
無脊椎動物 |
軟体動物 |
230 |
9 |
239 |
甲殻類 |
9 |
1 |
10 |
昆虫 |
72 |
1 |
73 |
その他の無脊椎動物 |
4 |
0 |
4 |
合 計 |
611 |
30 |
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(出典:1996
IUCN Red List ) |
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レッドリストには、野生絶滅(EW;Extinct
in the Wild)というカテゴリーがあり約30種があげられています。これは具体的には野生では絶滅し、飼育下だけに生き残っている種のことです。また野生に戻された場合でも、放された場所が原産地でない場合は野生絶滅とされるケースがあります。
日本の環境省が出した新しい「レッドリスト」では、トキと、トキだけに寄生するダニ1種が野生絶滅となっています。トキはIUCNの「レッドリスト」ではCR(近絶滅種)。中国(陝西省洋県)に野生のトキが100羽には満たないが、生き残っているので、野生絶滅にはなっていません。IUCNの「レッドリスト」ではモウコノウマ、フクロウオウム、クロアシイタチなどが野生絶滅種とされています
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